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男性更年期が心配で受診される方へ ――「中年太りタイプ」のもうひとつのシナリオ――

[2026.01.07]
前回の記事では、「なんとなく元気が出ない」「朝起きるのがつらい」といった不調と、テストステロン・生活習慣の関係についてお話ししました。
 
今回は、実際の外来で見かける「もうひとつのパターン」についてお話しします。

「10年で+10〜20kg」の中年男性に見られる共通点

「男性更年期じゃないかと思って…」と受診される中年男性の中に、こんな方が少なくありません。
  • この10年ほどで体重が10〜20kg増えた
  • お腹まわりが一気に立派になった
  • 健診で「肝機能異常」「脂質異常(LDL高値・中性脂肪高値)」を指摘されている
  • でも、テストステロンを測ると「一応、基準範囲内」
ご本人としては「男性ホルモンが減っているから不調なのでは?」と心配されているのですが、検査をしてみると、むしろ前面に出ているのは「中年太り+メタボ」というケースです。

脂肪が増えると、男性ホルモン(テストステロン)はどう変わるのか

脂肪組織には「アロマターゼ」という酵素が多く存在し、テストステロンをエストロゲン(エストラジオール)に変換する働きを持っています。
 
太って脂肪が増えると、
  • テストステロンの一部が脂肪組織でエストロゲンに変わる
  • 相対的に「テストステロンが働きにくく、エストロゲンが多い」状態に近づく
といったことが起こり得ます。
 
医学的には、こうした状態を含めて
  • 肥満
  • インスリン抵抗性(血糖が上がりやすい体質)
  • 相対的な低テストステロン・高エストロゲン状態
が組み合わさった「肥満関連男性性腺機能低下症」と呼ぶことがあります。
 
血液検査では「テストステロンは一応、正常範囲」でも、体の中では、男性ホルモンが十分に力を発揮できていない状況になっていることがあるのです。

こうした中年太りタイプに、いきなりテストステロン補充は正解か?

よく聞かれるのが、
「じゃあテストステロンを補充すれば、元気になりますか?」
という質問です。
 
結論からお伝えすると、肥満と代謝異常が前面に出ているタイプでは、いきなりテストステロン補充をするよりも、まず「減量・運動・生活習慣の立て直し」を優先する方が、医学的にも筋の良い選択です。
 
理由は大きく3つあります。
  1. 減量そのものがテストステロンを上げる  体重を落として内臓脂肪が減ると、アロマターゼの働きが抑えられ、テストステロン値が上昇することが複数の研究で示されています。痩せること自体が「自然な男性ホルモン治療」になり得ます。
  2. 肝臓・脂質・血糖をまとめて改善できる  テストステロン補充だけでは、肝機能異常や脂質異常、インスリン抵抗性そのものは十分に是正できません。一方で、減量と運動習慣の改善は、これらを“まとめて”良い方向に動かせます。
  3. 将来のリスクを下げる治療になる  メタボや脂肪肝は、心筋梗塞・脳卒中・糖尿病など、将来の重大な病気のリスクと直結します。「今の不調」を和らげるだけでなく、「10年後・20年後の自分」を守る治療にもなるのが、生活習慣の立て直しです。
もちろん、すべての方でテストステロン補充が不要というわけではありません。症状の強さや検査結果、持病などを総合的に見て、補充療法を検討するケースもあります。ただ、「中年太り+メタボ」が主役のケースでは、生活改善を治療の“土台”として位置づけるのが妥当だと考えています。

「みんな筋トレを」には、ちゃんと根拠があります

前回の記事でもお伝えしましたが、テストステロンを支える柱は
  • 睡眠
  • 運動
  • 食事
の3つです。
 
その中でも、肥満傾向のある中年男性にとって特に大事なのが「運動」、とくに筋トレです。
  • 筋肉量が増えると、基礎代謝が上がり太りにくくなる
  • 筋力トレーニングには、テストステロン分泌を促す効果が期待できる
  • インスリン抵抗性や血糖コントロールの改善にも役立つ
いきなりジムでハードなトレーニングをする必要はありません。
  • 自宅でのスクワットや腕立て伏せを数回から始める
  • 1日10分程度でもよいので、続けることを目標にする
  • 週2〜3回、「少しきつい」と感じる負荷をかける
こうした「無理なく続けられる習慣」が、結果としてホルモン環境も代謝も整えていきます。

検査結果に異常が並んでいる方は、内科としっかり連携します

中には、
  • LDLコレステロールがかなり高い
  • 中性脂肪が著明に高い
  • 肝機能障害がはっきりしている
  • 血糖やHbA1cが境界〜高値
といった、「いかにもメタボ・脂肪肝・糖尿病予備軍」という状態の方もおられます。
 
このような場合には、
「これは内科の先生と一緒に、しっかり診ていきましょう」
と、あまり迷わず内科にご紹介することも少なくありません。
 
男性ホルモンのことももちろん大切ですが、心筋梗塞・脳卒中・糖尿病といった“命に関わるリスク”が高い方では、コレステロールや血糖・肝機能をきちんと管理することが最優先になるためです。
 
当院では、
  • 「男性更年期かもしれない」というご相談の“入口”としてお話を伺い
  • 必要な血液検査(テストステロン・肝機能・脂質・血糖など)を行い
  • メタボや糖尿病が強く疑われる場合は、近隣の内科と連携して治療を進める
という形で、患者さんの将来を見据えたサポートを心がけています。

一人で悩まず、「どこから医療の出番か」を一緒に考えましょう

「運動や減量が大事なのは分かっているけれど、何度も挫折してきた」
「自分の不調が、男性更年期なのか、メタボなのか、別の病気なのか分からない」
そんな方こそ、ぜひ一度ご相談ください。
テストステロン補充は、治療の“ゴール”ではなく、あくまで選択肢のひとつです。まずは、ご自身の体の状態を正しく知るところから、一緒に始めていきましょう。
 

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