骨盤底筋運動には「2つの目的」があるって知っていましたか?〜「おならを我慢」だけでは終わらない、目的に合わせた骨盤底筋トレーニング〜
骨盤底筋運動(ケーゲル運動)は、尿漏れや頻尿、骨盤臓器脱の予防などで勧められることが多いトレーニングです。
当院ではこれまで、この骨盤底筋について積極的に情報発信してきました。
診察室でも骨盤底筋運動(ケーゲル運動)はできるだけ丁寧にお伝えしていますが、
限られた診療時間では、スポーツジムやリハビリのように細かなフォームやコツまでお話しすることはなかなかできません。
そこで今回は、診察室の一歩先のお話として、「骨盤底筋運動には実は2つの目的がある」ということをご紹介します。
骨盤底筋運動には「2つの目的」があります
一般的な筋力トレーニングを思い浮かべてみてください。筋トレには大きく分けると
・筋肉そのものを強くする
・神経と筋肉の連動を良くして、狙ったタイミングで使えるようにする
という2つの目的があります。
実は骨盤底筋も同じです。診察室では「おならを我慢するように締めてください。そこから少し前のあたりを意識して、同様に動かしてみてください」と説明することが多いのですが、本当はその先にある目的まで理解すると、より効果的なトレーニングになります。
① 骨盤全体を支える「土台」を作る
こちらは、
・骨盤臓器脱(膀胱瘤・子宮脱など)の予防
・骨盤底全体の支持力低下
を意識した考え方です。
骨盤底筋は一つの筋肉ではなく、多くの筋肉が重なって骨盤の底を支えています。
そのため、骨盤底全体の支持力を保つことが大切になります。
ここでは尿道だけを締めるというより、お尻や内もも、体幹など周囲の筋肉とも協調しながら身体全体で支えることを目標にします。
※骨盤底を超えて飛び出している、臓器脱の場合は治療の考え方が変わってまいります。下腹にものがはさまるような違和感をお持ちの方は、医療機関への受診をご検討ください。
② とっさの尿もれを防ぐ「タイミング」を身につける
一方、
・咳
・くしゃみ
・重い荷物を持つ
などで起こる腹圧性尿失禁では、筋肉の大きさ以上に「必要な瞬間に素早く締められるか」が重要になります。
これは筋力というより、神経と筋肉の連携(コントロール)を鍛えるイメージです。
尿道括約筋を素早く収縮させる練習は、この目的に役立つ可能性があるとされています。
※咳などの直前に骨盤底筋を意図的に収縮させることで、その場での尿もれが軽減したとする報告があります。ただし、この収縮訓練が長期的な症状改善にどこまで寄与するかについては、まだ研究段階の部分もあります。
もちろん実際には、この2つは完全に分かれているわけではなく、お互いに重なり合っています。
目的別トレーニングの実践方法
アプローチ① 骨盤全体を支える連動トレーニング
骨盤底筋だけでなく、
・大臀筋
・内転筋
・体幹
と一緒に働かせる練習です。
足を肩幅より少し広めに開き、つま先をやや外側へ向けます。ゆっくりしゃがみ、息を吐きながら立ち上がります。立ち上がる最後に
・お尻を締める
・内ももを軽く寄せる
・骨盤底を持ち上げる
という順番を意識してみてください。
これは骨盤底だけを鍛えるというより、身体全体の連動を利用して骨盤底筋を使う練習の一例です。
アプローチ② 尿道を意識する「コントロールトレーニング」
まずは尿道を自分の意思で動かせるようになることから始めます。
椅子に浅く座り、丸めたタオルや柔らかいボールを股の間に軽く挟みます。
その状態で、「尿道を身体の中へ吸い上げる」ようなイメージで収縮します。
まずはパッと締める動きを数回、続いて約5秒保持、力を抜く、を5回程度繰り返してみましょう。
お腹や太ももに力が入りすぎないことがポイントです。
ご自宅で意識しにくいときは
タオルを挟んで行うこの方法は、いわば「刺激を手がかりに、骨盤底筋の収縮を意識しやすくする」ための工夫です。
当院で導入している骨盤底筋運動チェア「フェミゾンDR」も、考え方としてはこの延長線上にあります。
座るだけで骨盤底筋周囲に磁気刺激が加わり、ご自身では意識しにくい部分の収縮を感じ取りやすくする、という位置づけの自費診療です。
運動そのものに置き換わるものではなく、「うまく力が入っているか分からない」という方が、まず感覚をつかむための選択肢のひとつとしてご案内することがあります。
ご興味があれば診察の際にお尋ねください。
力みすぎは逆効果になることがあります
ここで一つ大切な注意点があります。
このような連動トレーニングでは、「もっと強く!」と頑張りすぎてしまう方が少なくありません。
しかし、息を止めて強くいきむと、腹圧が大きく上がり、
かえって骨盤底へ負担をかけてしまう可能性があります。
目安は3〜4割程度の力。自然に呼吸を続けながら、無理なく動ける範囲で十分です。
腰痛がある方や、この姿勢で腰や股関節に痛みを感じる方は無理をせず中止し、主治医へご相談ください。
「締める」と同じくらい「緩める」ことも大切です
実は骨盤底筋は、鍛えるだけでは十分ではありません。
筋肉は、収縮できることと同じくらい、しっかり緩められることも重要です。
必要以上に締め続けるクセがついてしまうと、骨盤底筋が硬くなり、痛みや違和感につながることもあります。
運動の最後には、深呼吸をしながら身体の力を抜き、骨盤底がふんわり広がる感覚も意識してみてください。
ヨガの「チャイルドポーズ」のような姿勢でゆっくり呼吸するだけでも、リラックスの練習になります
(このテーマは以前のブログでも紹介しました)。
まとめ
骨盤底筋運動(ケーゲル運動)は、「締める体操」だけではありません。
目的によって、
・支える力を育てる
・素早く反応する能力を育てる
という2つの役割があります。
そして、支える・締める・緩める、この3つをバランス良く行うことが、長く元気な骨盤底につながります。
「病院では『おならを我慢するように』と言われたけれど、その先がよく分からなかった」という方は、
ぜひ今回ご紹介した考え方も参考にしてみてください。
当院でご相談いただけること
大阪府池田市の「おおしま泌尿器科」では、骨盤底筋トレーニングの指導はもちろん、
症状が強い方やご自身に合った方法が分からない方のご相談も承っています。
まずは一度、お気軽にご相談ください。
