骨盤底筋トレーニング、意識できるようになってきた!のその先へ。
[2026.02.16]
今回は改めて骨盤底筋運動についてのお話です。
診察室で「尿漏れや頻尿の改善には、骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)が大事ですよ」とお話しする際に、「尿道をキュッと締めるやつ」というトーンから入ります。
骨盤底筋は「一つの筋肉」ではない
「骨盤底筋」という名前の単一の筋肉があるわけではありません。
実際には、
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肛門挙筋
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尾骨筋
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会陰横筋
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外尿道括約筋
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外肛門括約筋
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球海綿体筋
といった多くの筋肉が層を成して、骨盤の底を支えています。
まずは“意識できる”ことが第一歩
意識のコツとしては、まず「おならを我慢する」ときのお尻の締まりを意識してみてください。
そこから意識をじわじわと前の方(尿道側)へスライドさせていく……。
外尿道括約筋は自分の意思で動かせる「随意筋」ですので、慣れてくればお腹の下の方に軽く手を添えて、内側からグッと持ち上がる感覚を掴めるようになります。
ある程度意識して使えるようになってきたら、
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素早く収縮する
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10秒程度しっかりキープして弛緩する
といったバリエーションをつけていきましょう。
この尿道括約筋は胸筋や背筋、殿筋のような大きな筋肉ではありません。
強い負荷が必要というよりも、「きちんと意識して使える」ことがまず大切です。
それでも続かない…という問題
このトレーニングは、
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道具がいらない
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通常は副作用がない
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医学的にも効果が実証されている
非常に優れた方法です。
ただし唯一の欠点は、効果が出るまでに時間がかかること。
そして、単調な「ピクピク運動」だけでは飽きてしまう方も少なくありません。
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少し慣れてきたけれど、もっと手応えが欲しい
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日常生活の中で、もっと効率よく鍛えたい
その疑問にどう応えるかを、ずっと考えていました。
ヒントは「コンパウンド(多関節)運動」
トレーニングの世界には「コンパウンド(多関節)種目」という考え方があります。
特定の筋肉だけを動かす単関節運動よりも、 複数の筋肉を連動させ、姿勢維持も含めて行う多関節運動の方が、より機能的な連動が得られると考えられています。
これを骨盤底筋トレーニングに応用できないか。
そこで提案したいのが次の方法です。
応用編:ニーリング・ヒップスラスト(正座からの臀部挙上)
① 内転筋を動員する
足を大きく開かず、膝を閉じて正座の状態から始めます。 太ももの内側(内転筋)を締めることで、内転筋と骨盤底筋は協調して働くことが報告されており、その連動を意識する目的で取り入れています。
② 股関節の伸展と連動させる
そのままお尻を浮かせ、膝立ちの状態まで体を持ち上げます。 このとき、大臀筋をしっかり締め込み、股関節を伸ばしきります。
③ 腹圧と引き上げを同時に意識する
頂点で、尿道と肛門を内側へ「吸い上げる」ように収縮させます。 座位での単独収縮とは異なる負荷環境で使う練習になります。
体幹・股関節・骨盤底筋を同時に使う応用的なトレーニングです。
日常動作に組み込むという発想
慣れてきたら、シャンプー中など日常の動作に組み込むことも可能です。
座った状態での単独収縮とは異なる刺激になり、 習慣化の助けになる可能性があります。
注意点:基本があってこその応用
もともと意識しづらい筋肉ですので、慣れないまま応用種目に進むと、外尿道括約筋への意識付けが散漫になる可能性があります。
まずは標準的な骨盤底筋運動を確実に行えることが前提です。
そのうえで、バリエーションの一つとして取り入れてみてください。
強く力みすぎると腹圧が過度に高まり、かえって逆効果になることがあります。
3~4割程度の力で、呼吸を止めずに行うことを意識してください。
腰痛がある方や、この姿勢で違和感・痛みを感じる方は無理に行わず、かかりつけ医にご相談ください。
まとめ:続く形にすることが最優先
医療機関での指導が「尿道の収縮」に偏りがちなのは、まずはその場所を認識してもらうためです。
そこから先の課題は「継続」。
頑張る、よりも 日常の中に入り込んで勝手に続く形にする。
それが理想だと考えています。
今回の提案が、習慣化の助けになれば幸いです。
皆さんのライフスタイルに合わせて、より強く、より機能的な骨盤底を一緒に作っていきましょう。
