男性機能障害ガイドライン2025にみる「行動療法」と運動の位置づけ
[2026.02.12]
院長ブログ、なぜか運動の記事がよく読まれています
当院ホームページのアクセス解析を見ていると、診療時間やアクセス情報よりも、
なぜか「基礎代謝と活動代謝」といった記事がよく読まれています。
泌尿器科に関心のある方だけでなく、運動やウェルビーイングに感度の高い方にも読んでいただいているのかもしれません。
診療ではもちろん投薬などの標準治療をきちんとご提案していますが、
診察室で拾いきれない「生活習慣」の話題もこのブログでは紹介しています。
本日は、2025年版男性機能障害ガイドラインをもとに、
ED・射精障害と運動の関係を整理してみます。
男性機能障害ガイドライン2025で何が変わったか
従来は「ED(勃起障害)」中心の記載でしたが、2025年版では
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勃起障害
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射精障害(早漏・遅漏など)
と、より立体的な構成になっています。
その中で共通して登場するのが「行動療法」という概念です。
治療には薬物、補助具、注射、手術、衝撃波治療など多様な方法が示されていますが、
今回は行動療法にあたる部分、特に運動について拾い出し、紹介してみようと思います。
勃起障害(ED)に対する生活習慣介入 ― 推奨A・エビデンスレベルⅠ
ガイドラインのCQ3 「EDに対して生活習慣への介入は有効か?」
→ 推奨グレードA 、 エビデンスレベルⅠ
解説では、有酸素運動を行った群で有意なED改善効果を認めたと記載されています。
つまり、
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減量
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有酸素運動
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生活習慣の是正
は「やった方がいいかも」ではなく、積極的に推奨される介入です。
薬物療法と対立する概念ではなく、
併用することでより効果が期待できる土台作りと考えるのが自然でしょう。
「走らなければ」と身構える必要はありません。
まずは歩くこと、日常の活動量を増やすことからでも十分意味があります。
まずは歩くこと、日常の活動量を増やすことからでも十分意味があります。
早漏と運動 ― 自律神経調節との関連
射精障害のうち、早漏についても運動への言及があります。
早漏については定期的な運動や高強度インターバルトレーニングが有効であったとする報告が紹介されています。
メカニズムとしては、
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自律神経系の調節
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交感神経優位の是正
といった観点が示されています。
EDほど強固なエビデンスではありませんが、
運動が射精コントロールに良い影響を与える可能性が示唆されています。
高強度インターバルトレーニング(HIIT)について
ガイドラインで紹介された高強度インターバルトレーニング(HIIT)について、
ジャンピングジャック、ウォールスクワット、腕立て伏せ、クランチ、ステップアップ、スクワット、ディップス、プランク、ハイニーラン、ランジ、サイドプランク、回転腕立て伏せ・・・・と、
かなり具体的な種目まで記載されています。
私は運動指導の専門家ではありませんので、
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本格的に取り組む場合は専門家の指導を検討する
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まずは安全な有酸素運動から始める
ことをお勧めします。
近年はYouTubeなどで解説動画も多く、費用をかけずに始められる環境も整っています。
出来そうだな、と思えるものを探して挑戦してみるのもよいかもしれません。
※ 検索のコツとして「HIIT 初心者 5分」 など 程度×時間 で検索するとよいものに会える可能性が高まるかと思います。
限界を超えたい方は HIIT 地獄 10分 などにトライしてみてください
遅漏について ― 器具を用いた行動療法
一方で遅漏については、不適切なマスターベーションが原因となる膣内射精障害については、運動よりもカウンセリングと
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マスターベーション習慣の見直し
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専用器具(例:TENGAヘルスケア製品)を用いたトレーニング
など、具体的な行動療法が紹介されています。
但し、この治療には時間がかかることも多いため、
お子さんをもつことが第一目標の方についてはパートナーの年齢を考慮し不妊治療を優先すべき、
との記載となっています。
射精障害と一言で言っても、 病態ごとにアプローチが異なることが今回の改訂でより明確になっています。
※安全に取り組むために
今回の記事は、以前の「肥満と排尿」シリーズでご紹介した比較的負荷の軽い運動よりも、
やや強度の高い内容を含みます。
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心疾患
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高血圧
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糖尿病
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その他持病がある方
は、かかりつけ医と相談の上で取り組んでください。
体調に不安がある場合は、休息や治療を優先することが最優先です。
当院で相談いただけること
最後に、当院での対応範囲について少し触れておきます。
当院では
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自費診療によるED治療薬の処方
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生活習慣指導
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TENGAヘルスケア製品の取り扱い
など、男性機能に関する初期対応は可能です。
一方で、
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外科的治療
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局所薬剤の専門的な取り扱い
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高度な心理療法や専門的リハビリテーション
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多数のサプリメントを組み合わせた専門治療
といった、より専門性の高い治療については当院では対応しておりません。
その場合は、適切な専門施設へおつなぎいたします。
男性機能の問題は、「どこに相談してよいか分からない」こと自体がハードルになります。
まずは入口として受け止め、必要に応じて次のステップをご案内する。
そのような立ち位置で診療しています。
まとめ
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EDに対する生活習慣介入は「推奨A・エビデンスⅠ」
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有酸素運動は勃起不全(ED)に対して有意な改善効果が示されている
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早漏は自律神経調節の観点から、定期的な運動、高強度インターバルトレーニングでの改善が期待される
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遅漏は器具を用いた行動療法が中心(運動との関連の記載は薄い)、不妊治療が主目的の方は優先度が落ちる
男性機能障害は薬だけで完結する問題ではありません。
診察室では薬を、 生活の中では運動を。
引き続き、有益な情報を持って帰っていただけるような発信を行って参ります。
