夜間頻尿と喫煙の意外な関係——なぜ、その一服が尿を増やしてしまうのか?
[2025.09.17]
今回は診療の中でであった、少しまれな状況についてお話したいと思います。
患者さんをイメージしてもらいやすいよう、モデル症例を提示し、展開してまいります。
診察室の限られた時間の中で説明しきれない部分を補完する意味を込めてこちらに紹介したいと思います。
① 「尿が出た」と感じる不思議な現象の謎
60代男性、夜間頻尿を訴えて受診された患者さんです。初診の検査で前立腺肥大症があることがわかり、内服薬の治療を開始したところです。
当初排尿後に150mlほど見られた残尿は、50mlほどまで低下し、少しずつためた尿をしっかり排出できるようになってきました。
とはいえ、夜間の尿は2~3回と依然多く、夜間多尿と呼ばれる、夜に尿を作る量が増大する病態へのアプローチを考えないといけない状況です。
夜間多尿の原因のひとつに睡眠時無呼吸症候群があり、この方はCPAPと呼ばれる呼吸管理の機器による治療を行っていました。
わたくし「夜間に排尿する際の1回ずつの量はどの程度ですか?昼と比べて多いでしょうか?少ないでしょうか?」
患者さん「あぁ、まだまだ多いねぇ先生。この薬このまま使っていて効いてくるのかい?内科で見てもらってるCPAPも有効だって先生は言ってたけど、トイレ行った後に一服吸った方がしっこもよくでる気がするし、そっちのが効いてるんじゃないかな?」
わたくし「・・・・えぇ?CPAPをいったん止めて、煙草を吸っているということでしょうか?」
② 喫煙が引き起こす、夜間頻尿の負のスパイラル
ここからが本題です。喫煙という行為が、なぜ夜間頻尿をさらに悪化させるのか、「尿が出る感」以外の悪影響を3つのポイントに分けて解説します。残念ながら、タバコは夜間頻尿の根本的な原因を解決するどころか、さらに悪化させる悪循環を引き起こしていました。
1. 尿を増やすタバコの正体 喫煙は、血管を収縮させ血流障害を助長し、呼吸の状態を悪化します。その結果、心臓の一部で圧力が高まった際に生じる心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が増える可能性があります。このホルモンは、尿を作る量を増やす働きがあるため、夜間多尿をさらにひどくしてしまうのです。喫煙は動脈硬化の原因ともなり、これも夜間多尿の原因となりうるといわれています。
2. 睡眠の質を破壊するタバコ 夜間頻尿には、「質の良い睡眠」が不可欠です。夜に熟睡すると、体内でADH(抗利尿ホルモン)というホルモンが正常に分泌され、夜間の尿量を減らす働きをしてくれます。しかし、ニコチンには覚醒作用があるため、睡眠の質を大きく低下させ、ADHの分泌を抑え込んでしまいます。
3. CPAP治療の妨げ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療に使うCPAPは、夜間の尿量を減らす効果も期待できます。しかし、患者さんのように途中で外してしまうと、その治療効果は得られません。せっかくの治療も台無しになってしまいます。
③ 夜間頻尿の改善は、まず「喫煙をやめる」ことから
おしっこがよく出るという一時的な感覚は、実は夜間多尿という根本的な問題をさらに悪化させていたのです。多くの夜間頻尿は、様々な要因が複雑に絡み合って起こっています。 この患者さんのように、思いがけない生活習慣が原因となっていることも珍しくありません。もし、夜間頻尿でお悩みなら、まずは睡眠や喫煙といった生活習慣を見直すこと。そして、自己判断をせず、私たち泌尿器科にご相談ください。あなたの生活背景まで含めて、一緒に解決策を探しましょう。
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