前立腺がんと「筋肉の質」の深い関係〜北摂の勉強会で聞いた最新研究と腰に優しい身体づくり〜
こんにちは、大阪府池田市の泌尿器科、おおしま泌尿器科 院長の大島です。
本日、「北摂泌尿器がん診療セミナー」という研究会(医師の集まり)に参加してきました。この会では、市立豊中病院・関西メディカル病院・大阪大学病院の先生方から講演を伺いました。
また、こうした会は病診連携(病院とクリニックの協力体制)のための大切な取り組みでもあります。
そこで伺った論文が非常に面白かったので、今回はひとつご紹介したいと思います。……つまりは、ほぼ受け売りです!(笑)
今回紹介する論文
当ブログではこれまでも「肥満と頻尿」「骨盤底筋と尿漏れ」など、泌尿器とフィジカル(身体づくり)の関係をお話ししてきましたが、今回もまさに「筋肉」のテーマです。
今年5月に国際誌『International Journal of Urology』に掲載された、私の元同僚でもある金城友紘先生らの最新研究です。
紹介論文 “Myosteatosis Predicts Poor Prognosis in Patients With Castration-Resistant Prostate Cancer Treated With Enzalutamide”(Kanaki et al. / Int J Urol, May 2026)
「筋肉の量」より「筋肉の質(Myosteatosis)」?
この研究は、進行した前立腺がん(去勢抵抗性前立腺がん:CRPC)でエンザルタミドというお薬の治療を受けている患者さんを対象にしたものです。
そこで注目されたのが、「Myosteatosis(マイオステアトーシス=筋肉の脂肪化)」という概念です。
簡単に言うと、霜降り肉のように「筋肉の中に脂がどれくらい入り込んでしまっているか(=筋肉の質)」という指標です。
研究の結果、サルコペニア(加齢や疾患、栄養による衰弱)の有無にかかわらず、筋肉の質が低下している(脂肪化が進んでいる)患者さんほど、お薬の治療効果が長続きしにくいという傾向が明らかになりました。
【ちょっと専門的な補足】 今回の論文は、過去のデータを集めて分析した「後ろ向き研究」というスタイルのものです。くじ引きのように患者さんをグループ分けして厳密に比べた「ランダム化比較試験」ではないため、「筋肉の質さえ上げれば絶対にがんが治る」とまでは断言できません。ですが、「筋肉の質と治療の効き目には強い関係がありそうだ」という非常に大きなヒントを与えてくれる内容です。
進行前立腺がんの治療を受けておられる方やご家族にとっては、少し気になる内容だったかもしれません。ご不安な点がありましたら、まずは主治医の先生にご相談ください。もちろん当院でも、わかる範囲でお話をうかがうことができます。
論文でチェックしていたのはお腹の奥の「腸腰筋」!
ちなみにこの研究で、筋肉の質や脂肪化を調べるためにCT画像で評価されていたのが「腸腰筋(ちょうようきん)」という筋肉です。
腸腰筋は、お腹の奥深くにあり、背骨と骨盤・太ももを結ぶ重要なインナーマッスル。姿勢を保ったり、歩くときに足を引き上げたりする働きをしています。
今回の論文では運動方法までは検討されていませんが、付録として、腸腰筋を安全に使う運動の一例をご紹介します。
ご家庭で安全に取り組める運動を【腰に優しい度】と一緒にご紹介します。
① デッドバグ(仰向けで手足を交互に動かす)
腰に優しい度:★★★★★
仰向けに寝て両手両膝を上に向けた状態から、対角の手足を交互にゆっくり伸ばします。背中が浮かないよう床に押し付けるのがポイント。腰への負担が最小限で、運動に慣れていない方にも安心です。
② レッグレイズ(仰向け足上げ)
腰に優しい度:★★★★★(※膝を曲げれば)
仰向けで両膝を軽く曲げ、お腹の力で足をゆっくり上げ下げします。足を伸ばし切ると腰が反りやすいので、膝を曲げて行うのが腰を守るコツです。
③ プランク(肘つき体幹キープ)
腰に優しい度:★★★★☆(※お尻が落ちると腰に負担がかかる可能性あり)
頭からかかとまでを一直線に保ち、お腹の奥と体幹をしっかり固定します。姿勢が乱れてお尻が落ちると腰が反るリスクがあるので注意してください(きつい方は膝をついた状態からで大丈夫です)。
④ マウンテンクライマー(腕立て姿勢での膝引き寄せ)
腰に優しい度:★★★☆☆
腕立て伏せの姿勢から、交互に膝を胸に引き寄せる動的トレーニングです。腸腰筋にしっかり効きますが、疲れてくると骨盤の位置がブレて腰を痛めやすいので注意が必要です。しっかりフォームを保てる方向けの上級編としてご紹介します(無理は禁物です)。
泌尿器科医として、これからも「フィジカル」を推して参ります。
北摂の先生方との勉強会でこの研究成果を聞き、「やっぱり適切な身体づくりは裏切らないな」と改めて感じました。
もちろん、外来の診療時間内ではお薬や検査の話が中心となり、こういった食事や運動、身体づくりについてじっくりお話しするお時間はなかなか取れません。
ですのでこの院長ブログでは、「通常の診療ではこぼれ落ちがちな、身体と病気の深い関係」や「日々のちょっとした工夫で改善が期待できること」を中心に、今後もわかりやすく発信していきたいと思っています。
大阪府池田市の泌尿器科として、当院では北摂地域の基幹病院ともしっかり連携を取りながら、皆さまのトータルな健康を陰ながら応援しております。
前立腺がんの検査や治療、生活習慣に関するご不安がありましたら、まずは一度ご相談ください。
